意思と呼吸

声はこころを映す鏡…
思考や感情が呼吸に現れている?!

日本人の話し方の特徴として、“一息で話すセンテンスが短い”ということはどこかでお話ししたと思います。

「きいてよ~、わたしね、昨日さぁ、朝まで寝られなくて~…」

なんて話し方よく聞きますよね。
あんまり意識したことない?
文章ですら句読点がないと読みにくいだけでなく少し息苦しくなりませんか?

日本人が短い語句をつないで話す理由に次のようなことが考えられます。

  • 日本語は助詞が正しければ語順は自由だから
  • 日本人にとっての会話は双方による共同作業だから
  • 結論を決めずに話す傾向があるから(言い切りたくない)
  • 一息が浅く短いから など

英語のように、意味を伝える上で語順が重要な役割を果たす言語では、定型文のようないくつかの語句がまとまった一文(フレーズ)が多数あります。
よく英会話のテキストでも、主要なフレーズはそのまま覚えることを勧めていますよね。

  • I was going to~. (~するつもりだ)
  • Do you want to~? (~しませんか?)
  • I feel like ~. (~したい気分だ)
  • To tell you the truth, ~. (実をいうと~)
  • Am I good to go?(もう大丈夫ですか?) …など

最初から話したいこと(結論)も語順も決まっているからこそ、英語話者は長い文章を一呼吸で話すわけです。
その点においても、英語は腹式呼吸が必要になることが伺えますよね。

とても早く発音される理由も同じです。
基本フレーズなどは、ある程度決まった語句のまとまりであるため、まるで一言のようにさらっと発音します。
日本人は区切れるところが見当たらず焦ってしまいます。

長いセンテンスで話すことは日本人でもあります。
会議などですでに話す内容を用意しているときなどは、普段よりは長くなるでしょう。意思を持って話す場面では日本語でも普段よりは長めです。

きちんと説明する場面や説得する場面でもセンテンスは長くなります。
もしそのような場面で、ブツブツと単語をつなぎながら話す人がいたらどう思いますか?
思慮に欠けた幼い印象を受けますよね。

自分に自信があるときやそう見せたい時、また相手に信頼感や安心感を与えたいときなども一呼吸が長くなります。

わたしたちは他者の呼吸を感じ取っています。
また、感じ取られていることを知っているので、意識的に呼吸で伝えようとすることもあります。

呼吸は思考と結びつき、意思がまた呼吸に反映されるのです。

日本人の国民性

話し方一つとっても、国民性というものが現れていますよね。

主張する文化”と“協調する文化

自分の言いたいことをちゃんと主張できなければならない文化圏と和を重んじ共生を第一に考える文化圏の違い。

狭い国土の島国日本では、個よりも集団を優先し、極力争いは避けて隣人と良好な関係を築くことが善しとされてきました。

別に悪いとこじゃないですよね?
むしろ日本人のいいところです!

ですがその反面、人の顔色を窺い、何事も言い切らないというイマイチ煮え切らない態度が誤解を招くこともしばしばです。

「なに食べる?」
 「別になんでもいいよ。」
「じゃあ、パスタとかは?」
 「イタリアンかぁ…」
「だったら中華とかにする?」
 「中華って気分じゃないかなぁ」
「なら好きなの決めてよ!」
 「え~、とくにないんだけど…」

こんな不毛なやり取りも日常茶飯事なのではないでしょうか。

自分の意見を押し切るのは自分勝手な気がするから?
それとも、自分の意見に自信がないから?
はたまた、責任を取りたくないから?

思考が呼吸に、また呼吸が思考に影響しています

相手を思いやる気持ちは大切です。
でも相手を尊重するあまり、自分の考えや気持ち、意思をあやふやなものしてしまうのでは意味がありません。
思いやりの気持ちまでもあやふやに…。

考えがまとまらないと、上手く息を吐くことができません。
よく理解できていないことを話すときや自分の意見に自信がないとき、いわば“主張する意思がない”とき、呼吸は弱く短く頼りなくなります。

日本では“主張する”ということばにあまり良い印象がありません。
わがまま、自己中心的、融通が利かない、というイメージが重なるためです。
はたして本当にそうなのでしょうか?

本当に主張したいことがあるときは、周りの意見をよく聞き、よく考え、自分なりに思いを巡らせ、どうしたら伝わるのかをよくよく吟味して、最後には勇気をもって声にするのではないでしょうか。

まぁ、日常会話でそれほど気負うこともないですが (;^ω^)
大切なことくらいは意思を持って伝えたいものですよね。
その意思が呼吸となり、声となるのですから。

“息”を使った慣用句に次のようなものがあります。

  • 息を合わせる、息が合う
  • 息がつまる
  • 息を飲む
  • 息を凝らす
  • 息が長い
  • 息を吹き返す

“息”が、直接的には生命と、間接的には感情(こころ)と結びついていることを示しています。

普段はほとんど意識することなくしている呼吸ですが、
それをコントロールして声にし、また歌っているのです。

体とも、心とも、密につながっている呼吸。
知っておいてください。
あなたの声に、あなた自身が映し出されていることを。


~スポンサーリンク~

wowow


音がつながるリンキング

意志と呼吸のつながりを理解したところで、本題に戻ります。

英語のセンテンスは意思を持って話すことから長くなる。

自分で何か言いたいのかわからないままでは、いつまで経っても呼吸は弱く短いままです。
英語を話す(発音する)ときにも、日本語で話すときのように単語を一つひとつつないでいこうとしていませんか?

思考も呼吸も途切れ途切れでは、英語は聞き取ることも発音することも上手くできません。

文字で書かれていれば意味が分かるのに、音声では聞き取れない。
それは一単語ずつを均等に聞こうとしているからです。

英語にはいろんな音があるんでしたよね。
音節も等間隔ではありませんよね。
ある程度語順も決まっています。
単語にも、いくつかの語彙のまとまりにもリズムがありました。

すべての音が均等に聞こえるはずがありませんよね?

とりあえず、今すべきことは“間違った予期”を修正することです。

「この音(単語)はこう聞こえるはず!」

そんな思い込みがあるうちは正しい音は聞こえません。
ここでいう“正しい”とは、聞こえたまま、あるがままの音のことです。
自分勝手に決めた正しい発音をしないようにしましょう。

英語は、一呼吸の中で次々と音を調音していくため、必然的に音素同士がつながり音が変化することがあります。

それがリンキング(リエゾン)です。

一つの単語をゆっくり発音するときには起こりません。

一息で速く発音した時に起こる現象です。
音と音を故意に“つなげる”のでなく、結果的に“つながってしまう”のがリンキングです。
音同士が接近したことで別の音に聞こえたり、音そのものがなくなったように聞こえます。

リンキングには主に次のパターンがあります。

  1. 音の連結
  2. 音の脱落
  3. 音の同化

音の連結

look at
catch up
far away
take it easy

子音で終わると単語と母音で始まる単語が続いたとき
二つの音がつながって別の音のように聞こえます。
頻度としてはこれが一番多く出現します。

音の脱落

west side
sit down
Iced tea
good bye

単語のつなぎ目に同じ音か似た音がくると前の音が発音されなくなります。
主に破裂音(“t”がもっとも多い)が続くと起こりやすく、破裂音以外では“v”でも同じように音が飲み込まれます。

音の同化

of course   ※1
have to ※1
next year ※2
could you ※2

同化にはいくつか種類がありますが、出現頻度の高いものを2種類あげると
・有声音+無声音とつながりとどちらも無声音になる(※1)
・前の単語が”t/d/s/l”で終わり、次が”y”のときは音が融合する(※2)


細かく挙げればまだあるようですが、英語学習がメインではないのでこのくらいを理解しておけば十分かと思います。

ネイティブの皆さんはこのルールを意識してはいません。
ですから難しく考えず、”発音しにくいからこのように変化した”とか”めんどくさいからこうなった”と考えればOKだと思います。

だって日本語でも似たようなことしますよね?
「ってゆ~か(と、言うよりかは)」とか「しゃ~ない(仕方ない)」とかね。

英語はもともと弱い音やあいまいな音があるのですから、それを早く言えば日本語よりも変化するのは当然です。

リンキングのいくつかのパターンを知っておくことで、“なぜ聞こえなかったのか”が分かります。
“どうしてそんな音になったか”が分かれば不安にならずに済みます。

何度も聞いているうちに慣れてきます。
英語の音を、英語の呼吸で発音していれば、自然とリンキングするようにもなります。あとは練習あるのみです!

まとめ 動画付き

  • 英語は一息で発話するセンテンスがとても長い
  • 言いたいことが決まっていることで、息は強く長く吐かれる
  • 呼吸は生命だけでなく、感情や意思と結びついている
  • 流暢に英語を発音するとリンキングが起こる
  • リンキングには、主に“連結、脱落、同化”がある

一つひとつの単語を均等に聞き取ろうとしたり、発音しようとすれば、またジャパニーズイングリッシュに逆戻りしてしまいます。
英語の特性とルールをしっかりマスターして、間違った音を予期せずにトレースできるように頑張りましょう。

YouTubeで見る

>>>次に進む

関連記事

No responses yet

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。