~目次~
言語は人格をつくる
英語歌唱メソッドにおいて重要な知識である英語の特性。
この辺で一度、英語と日本語の違いをまとめてみたいと思います。
と、その前に…もう一度だけこのプログラムの目的を確認しておきます。
“歌うために必要な知識と技術を「英語で歌う」ことで手に入れる!”
英語学習が目的ではありません。言語として英語は優れていて日本語は劣っている、そんなお話をしているわけでもありません。
英語と日本語、それぞれの特性を理解して、できるだけ具体的な方法で“歌うための力”を養っていくことが目的です。
どの国の人も、最初に習得するのは母語です。
母語の習得は、人格形成において極めて重要です。
“自分は何者であるか”
というアイデンティティの獲得にも通じます。
もし容姿も国籍も日本人でありながら、日本語がまったく話せなければ、自分が日本人であるという意識は乏しくなります。
逆に容姿も国籍もアメリカ人であっても、日本語しか話せなければ、自分はアメリカ人であるより日本人あるという意識の方が強くなります。
なぜなら、そのことばで考え、そのことばで生きてきたからです。
母語を否定することは自己否定につながります。
ですから日本語が劣っているなんて思わないでくださいね。
日本語はとても美しい言語です。そんな日本語から多くの恩恵を受けて、わたしたちは日本人になったのです。
ですが、母語は日々の生活、習慣のなかで身に付けていくもの。
読み書きを除いては、あまり学習した感覚はないですよね。
母語であっても知らないことばはたくさんあるし、間違った使い方をすることもしょっちゅうです。それは他国の人も同じです。
特性だの個性だの言われても、ピンとこない人も多いでしょう。
良い悪い以前に、“違い”を知るためには何かと比較する必要があります。
今回、母語ではない英語という言語をクローズアップしてはいますが、それは同時に母語である日本語の個性を知ることでもありました。
結果的には、ポピュラーボーカルにおいては“英語の方が有利”であり、歌唱技術を向上させるための有効な手段となり得る、ということに辿り着き、英語でのアプローチを提案しているわけです。
日本人が日本語で表現するなら、
もっと日本語についてよく知ること!
日本人だからこそ、日本語だからこそ、表現できることがあります。
それを知るためにも、英語を利用してください。
歌が上手くなるための手段として英語の有用性を学んでいますが、併せて日本語についての気付きも多くありました。
いずれは、それが日本語で表現するときにおおいに役立ちます!
ただ、しばらくは“歌えるからだ”と“歌うためのちから”を得るために、“英語”の特性を理解することに努めましょう。
英語と日本語の違い~まとめ~
これまでのおさらいです。
- 英語は子音骨格、日本語は母音骨格(参照:英語脳をつくる)
- 英語は主に腹式呼吸、日本語は主に胸式呼吸(参照:英語の発音は腹式呼吸)
- 英語の音節は一定ではない、日本語の音節は一定(等間隔)(参照:英語の音節を理解する)
- 英語は表音文字、日本語は表意文字(参照:英語は音を伝える表音文字)
- 英語のセンテンスは長め、日本語は短め(参照:呼吸のつながりとリンキング)
- 英語にはリンキングがある(参照:呼吸のつながれとリンキング)
もっと大きな枠組みで言えば、
- 呼吸が違う
- 使う筋肉が違う
- 音声認識の枠組みが違う
ということになります。
呼吸が違うからこそ使われる筋肉も違い、その呼吸で発する音だからこそ音声認識の枠組みも異なる。
やはり第一は呼吸ですね。歌も呼吸が一番大切です。
もう少し焦点を絞り、直接歌の練習時に注意したいこととしては
- 日本語にはない母音がある(長母音・短母音など)
- ことばにリズムがある(強弱などの緩急を含む)
- 連続性に伴って音が変化する(リンキング)
これらは、聞き取りや発音の練習をするとき、具体的に導入する知識としては頻度の高いものです。
“音が聞き取れない”ときや“聞き取れたのに再現できない”ときにチェックしたいポイントです。
いくら英語の読み書きが得意でも、正しい音を聞き取れない(発音できない)のであれば「英語歌唱メソッド」は実行できません。
このメソッドで重要なのは、
音のデッサン(音を聞き取ること)
音のデザイン(音を再現すること)
それを可能にするために、英語の特性やルールを知る必要がありました。
だって「もっとよく聞きましょう!」だけでは埒があきませんよね。
「英語?あっ無理…わかんない」で終わってしまいます(;^ω^)
面倒でも、これらの知識をヒントまたは足がかりにして、音を聞き取る能力と音を再現し声で表現する能力を磨いてください。
無自覚のまま身に付けた日本語の特性が、英語のそれを邪魔しています。
日本語は日本語、英語は英語!
ごちゃまぜにしたら、どちらの個性も失ってしまいます。
~スポンサーリンク~
英語らしさ
“正しい発音”と何度も言っていますが、それは“完璧な発音”という意味ではありません。
わたしたちはこれまで英語で生きてきてはいません。
英語に適した骨格でもなければ、英語で養われた人格でもありません。
だからといって、英会話が目的なのではありませんから”通じればいい”というものでもないわけです。
ではどの辺りを目標にするべきか?
英語の発音が良くなっているとどこで判断するのか?
それは“英語らしさ”です。
英語の音のなかに日本語の音のたくさん混ざっている。
英語になくてはならない特徴が欠けている。
英語らしさより日本語らしさが上回っているうちはまだまだです。
“英語っぽい発音”なんていう適当なものではなく、“日本語にはない音”“日本語ではしない発音”をした“英語らしさ”を追究してください。
それが、日本語では獲得できなかった技術の習得につながります。
ここまでのことを踏まえ、正しい発音への道筋を記しておきます。
- 呼吸が流れていること
- 子音がしっかり発音できていること
- 正しい音節になっている
- アクセントがついていること
- リズムなどの規則性が強く現れていること
“1.の次に、2.を行う”のではありません。
1.ができると2.に進むということです。もし、3.に進まないようなら、その前の段階で何か失敗していると考えてください。
3.までは完璧なのに4.だけができない、などということはありません。
未だ子音もろくにならないようなら、そもそも息が流れていないのです。
アクセントがつかないのなら、正しい音節ではない可能性があります。
正しい音節にならないのは、子音が発音できず“かな”になっているからかもしれません。
“英語らしさ”が失われている個所があれば、その前の過程を確認してみる!
呼吸も流れず、子音も鳴らせていないのに、正しい音節になっていることはありません。アクセントがついていないのに、リズムが現れていることもありません。
1~5までを何度も往復しているうちに、“日本語らしさ”が軽減し“英語らしさ”が上回ってきます。
どこでミスをしてしまったのかが分かれば、正しい練習ができます。
そして、その練習は英語の発音に留まらず、歌うために必要な呼吸や筋肉を養うこと、歌唱技術習得のための練習になっています。
まとめ 動画付き
- 言語は人格およびアイデンティティの形成と密接な関係がある
- 英語の特性を知ることが日本語の個性を知ることにもなる
- “英語っぽい”発音ではなく、“英語らしい”発音にするのが目標
- “英語らしさ”の中に“歌が上手くなる”秘訣が詰まっている
知識がないことで間違った判断や効果のない練習をしてしまいます。
ですが、知識だけを得て満足しているようでは宝の持ち腐れです。
知識をどう活かし実践していくか。
自分が得た知識をもっと活用して“知恵”にしてください。
>>>次に進む
No responses yet