~目次~
音の味わい
音が持つ個性とメロディーの個性
二つが重なるとその個性はより強くなる!
ことばになる前の段階-音-について考えてみたいと思います。
音にはさまざまな“味わい”があります。
あなたは感じたことがありますか?
音の三要素は“高さ、大きさ、音色”でしたね。
・高くて、大きくて、硬い音
・低くて、小さくて、かすれた音
・低くて、大きくて、こもった音 …など
とくに音色に関してはことばで形容するしかないので
・柔らかくてやさしい音
・ゴツゴツして重い音
・湿り気があって甘ったるい音 …など
表現方法はさまざまで、高さや大きさほどの客観性はありません。
それでも、やっばり“違いがある”とわたしたちは認めています。
なんとなくでも、“ざらざらした音”があることを“キラキラした音”があることを知っています。
主観は強まりますが、“さみしい”とか“かわいい”と感じる音だってあります。
音は、通常見ることも触ることもできませんが、わたしたちは高い低いや大きい小さい以外にもいろんな味わいを音から得ています。

日本語は音の味わいを大事にした言語です。
その音を発したときの体や心の感覚…
それをそのままことばにしていたりします。
実は、日本人はとても音に敏感なんです。
色に“色相・明度・彩度”があるように、音にも明るさや重さ、硬さや質感のようなものの違いを感じることができます。
同じ高い音でも、音質によっては耳障りなほど高く感じることもあれば、それほど高さを感じないこともあります。
同じ言葉でも、どんな声質(声調)で言われるかでかなり印象が変わります。
日本語については、今冬刊行予定の『日本語で歌が下手になる?!』で詳しく説明していますので宜しければそちらを(#^^#)
音声による音の味わいは
歌の表現に欠くことのできない要素
母音の個性
母音は声道内のかたちを変えることで生成されます。
基本的には阻害のない音でしたね。
それは日本語に限らず英語も同じです。
ただ今回は母語の方が分かりやすいので、日本語の母音を使って音の個性を確認してみたいと思います。

音声として区別できるのですから、それぞれに個性があるのは当たり前のことです。
そうでなければどれも同じ音に聞こえていることになります。
ただ、普段わたしたちは胸式呼吸&少し喉で阻害を加えたような母音を鳴らしていることが多いため、音としての区別はつくものの、“個性”を感じるとまでは言えないでしょう。
「あ・え・い・お・う」
…よくわからん (-_-;)
そうなりますよね。
いくら個性のある音でも、振動も共鳴も弱ければ認識しづらいのは当然です。
聴力(耳)だけで感じ取ろうとすればなおさらです。
響きの個性は腹式呼吸でないと強く表れません。
浅い呼吸で、舌や喉を必要以上に動かしていては十分な共鳴は得られません。
英語の複雑な母音を聞き取れないのも、発音できないのも仕方ないですね。
-詳しい説明は今回のフォロー動画内でしていますのでご覧ください-
動画では、その場の空気の振動までは伝わってこないので、少しわかり難いとは思いますが、共鳴の度合いにより音の違いが生じることが分かったと思います。
その違いを頼りに、響かせるコツを習得しましょう。
安易に大きな口を開けるだけではダメです。
ただ大きな声を出すだけでも声は響きません。
音の個性を感じ取れるように調音、発声してください。
意味を持たない一つの音にも、明るさや重さなどの個性がある。
腹式呼吸で発声する歌では、その個性がより強く表れる。
音による共感
思った個性が上手く出せれば良いですが、あまり出したくない個性や間違った個性も強く表れてしまうことも留意しておきましょう。
本来は、音の個性は耳で聞くだけで味わっているわけではありません。聴き手もその音を自分が出した際の感覚を想像し重ね合わせています。
分かりやすい例は、赤ちゃんに話しかけるときの幼児語。
「まんまおいちぃでちゅか~」
この場合は、話しかける側の大人が幼児の調音に寄せています。
発声(調音)器官が未発達な幼児が発する音を味わい、自分も同じ味わいの音で話しかけることでコミュニケーションを取ろうしています。
歌の場合、聞き手もあなたが出した音を自分が出した音のように感じ取っていることがあります。
もし、そこに大きなズレがあれば違和感を感じます。
また、自分では味わえない音を与えてもらうことで新たな味わいを得ることもあります。
伝わる歌がいい歌です。
でも、不本意にも“伝わってしまう”ものがあることも覚えておきましょう。
同じ歌詞の同じメロディーを歌っていても、ある人は鮮やかな情景を映し出すことができるのに、ある人はまったくそれを伝えられなかったりします。
音の個性を理解することで、呼吸や発声、調音がさらに上達します。
呼吸や発声、調音が上達すれば、より音の個性が表出します。
音の個性が表れることで、声での表現力が増します。
より多くの情報を伝えることが可能になります。
~スポンサーリンク~

音とメロディーの調和

日本語は高低アクセント(参照:英語の基礎知識1)です。
音階ほどではありませんが、少しだけ音が上がったり下がったりします。
日本語を活かした歌であるならば、高低アクセントと音程の動きが一致している方が自然なことばに聞こえ、音とメロディーが調和していると感じます。
アクセント以外にも、音の持つ個性(音色)と音の動き(音程)が一致すると、メロディーはより鮮明になります。
高さを感じる音で明るい音色、少し暗い印象のフレーズで奥まった音や重めの音などを強調することでメロディーの表情が強まります。
もし音程が上がったのに、音色が沈み込んだらどうでしょう?
もし力強いメロディーなのに、音色が不明瞭だったらどうでしょう?
違和感を感じたり、音程そのものが外れているようにも感じます。
音の個性を“音相”と言います。
この音相をメロディーと調和させることで随分表情が変わります。
音相を工夫することによって、もっと聞き取りやすいメロディーになったり、日本語ならばことばの意味を伝えやすくなったりもします。
音相表現はとくに日本語の歌で活かされる歌唱技術と言えるでしょう。
それぞれの音の個性、メリットやデメリットを理解し、メロディーと上手く調和させることで、表情だけでなく、音程やリズムも改善します。
個性豊かな英語
英語の母音は日本語の4~5倍もあります。
アクセントのつく強い音もあれば、曖昧に発音される音もあります。
強さも長さも変わらない「あいうえお」。
それにひきかえ英語の母音は、強さや長さの違いもあるうえに、“あ”と“え”の中間の音、“あ”と“お”の中間の音、日本語よりこもった音や濁った音などもあります。
英語は日本語よりもバリエーションが豊富なのです。
共鳴しやすい腹式呼吸ならではと言えるでしょう。
胸式呼吸のままでは太刀打ちできませんね。
浅く弱い呼吸では、日本語の個性も感じられないくらいです。
せめて音の個性を感じられるようになるまでは、口のかたちくらいは意識しましょう。
日本語のときの呼吸や口のかたちのまま、微妙な英語の音の違いを出そうとしても無理があります。
“あ”に聞こえる音も、“う”に聞こえる音も、英語には何種類もあるのに、耳だけでそれを聞き分けようなんて無謀です。
だったら、口のかたちの違いは?
分かりやすいですよね。
口角や舌の位置、唇の丸め具合で音は変化しますから、そこから音の個性を感じ取っていきましょう。
少しでも違いが感じられてきたら、必ず他の英語の音と比較してください。
「英語の●は、英語の〇の音より口を突き出すんだな」
「英語の●は、英語の〇の音よりもっと暗いのか」
“日本語の母音”と比較しない方が賢明です。
意味が伝われば良い日本語とは違い、音を伝えなくてはなりませんから、英語は英語の音のなかで比較して、その響きの違いを捉えましょう。
~デザインする~はここで一旦終了となります。
次は~表現する~にお進みください。
英語の特性やルールを理解しながら音をデッサンし、次にそれを再現する。
聞き取れるようになることで鳴らせる音が増え、また鳴らせるようになってくると聞き取れる音も増えてくる。
そんな成果が現れていたらVery Good!
発音の上達に伴い腹式呼吸に近づき、腹式呼吸に伴い響きの個性が感じられ始めていたらExcellent!!
次へお進みください。
まだ成果を感じられていない人は、何度でも読み返し、再確認、再挑戦してください。やれることもやるべきこともたくさんありますから(^_-)-☆
まとめ 動画付き
- 音にはそれぞれ個性があり、また異なる味わいがある。
- 音の個性は歌の表現に欠くことのできない要素である。
- 日本語には音相を活かしたことばがたくさんある。
- 音の個性とメロディーが調和するとより伝わりやすい表現になる。
- 英語の音はバリエーションが豊富。
- 英語は英語の音の中で比較し響きの違いを捉えていく。
“大きな声でしっかり発音する”だけでは、英語に限らず日本語ですら響きの個性は感じられません。
その音にどんな味わいがあるのか?
他の音との個性の違いはなにか?
それをできるだけ明確にイメージして声にしましょう。
>>>次に進む
No responses yet